不倫は違法? 発覚後のNG行為は? 不倫にまつわる法律の基礎知識

不倫は個人間のトラブルであると同時に慰謝料請求ができる法的な問題でもあります。また、本来は被害者である不倫された側が加害者になりかねないリスクの高い行為もあり、もしものために知っておきましょう。
不倫は法令に抵触している?

不倫の証拠をおさえられ訴えられれば、慰謝料を請求されます。証拠や裁判と聞くと、何かの法令に抵触した違反行為、軽犯罪に該当するの?と疑問に思う人もいるかもしれません。
不倫で慰謝料請求できる根拠は大きく2つあります。
保護された権利を侵害する不法行為
まず、不倫そのものは刑法に違反する犯罪行為ではなく、あくまで民法上での問題です。そのひとつが第709条の「不法行為による損害賠償」で、条文に「故意又は過失によって他人の権利、法律上保護される利益を侵害した者は生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。故意、過失によって、法的に保護されている権利を侵害した場合、その責任として損害賠償金を支払うことになります、
さらに、不倫はひとりで行う行為ではありません。第719条「共同不法行為者の責任」にて「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」とあり、配偶者だけではなく不倫相手にも損害賠償の責任が生じます。
貞操義務に反する不貞行為
不倫の「不法行為による損害賠償」は、婚姻関係での貞操義務に反していると考えられています。法律で「貞操義務」について明確に記されてはいませんが、以下の2つによって成立しています。
・第752条「同居、協力及び扶助の義務 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」
・第770条「夫婦の一方は次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる 1.配偶者に不貞な行為があったとき」
離婚請求ができる事由に「不貞な行為があったとき」と記されているため、夫婦の義務である協力、扶助には「不貞行為をしない」という貞操義務も含まれているものと判断されるわけです。
不倫に該当する条件とは

不倫と同義として浮気という言い方もしますが、不貞行為をさす不倫と浮気は異なります。前提として、不貞行為は事実婚を含めた配偶者がいる場合です。
自由意思で不貞行為があった場合
不倫に該当するには、下記の3つを満たす必要があります
・既婚者だと知っている、知ることが可能な状況
・自由意志
・性的な関係を持った
不法行為が成立するには「故意または過失」と「相手の権利を侵害」が必要なため、不倫も同様に「知っていてわざと」か「知ることができたのに、うっかり」、強要されたわけではなく、「夫婦の貞操義務に違反した」ことが条件といえます。
不倫に該当しないケース
では、配偶者がいるにも関わらず、不倫と認定されないケースはどういうものなのでしょうか。考えられるのは以下の3つです。
・既婚者であることを隠していた
・自分の意思ではなく、強制された
・類似も含めて性的行為がない
1つめは婚活アプリなど独身を前提としている場で虚偽の申告をしていた場合、不倫した本人はともかく、相手には共同不法行為者としての責任は発生しないと考えられます。
自由意志ではなく、セクハラや故意に酩酊状態にさせられた状況で性的行為があった場合、不倫ではありませんが、別の法令に抵触している可能性が高くなります。
そして、性行為がなければ不倫と認められないのが一般的ですが、キスや手をつなぐ、良識の範囲をこえて親密なつき合いを続けるなど類似行為を繰り返している場合、悪質性によっては不貞行為だと認められることもあります。そうした類似行為も一切なく、メールなどで「会いたい」と伝えているだけならば、不倫とはいえません。
不倫が発覚したときにすべきこと、避けること

配偶者の不倫が発覚したとき、冷静でいられる人はまずいないでしょう。感情のまま責めたくなるかもしれませんが、離婚、再構築どちらを選ぶにしても、すべきことがあります。
まずは情報収集と証拠確保
決定的な場面を目撃したわけではない限り、どんなに疑わしくても真相はわかりません。冷静になるためにも、情報収集として、まずは違和感を覚える言動や帰宅時間などを具体的に書き出します。誰かに相談するときも、仔細な情報は役立ちます。
不倫の証拠を揃えるのは、離婚のためだけではありません。再構築を望むのならば、余計にきちんと話し合い、どうしたら再構築できるか、信頼回復への条件についても決めた念書を作成したほうがいいでしょう。その際、証拠がなければ「気のせい。大げさだ」と言い逃れることも想定できます。
自力調査、暴露は避ける
反対に、不倫された側が避けたほうがいい行為はあるのでしょうか。
まずは自力での調査です。探偵や興信所ではなく、自分、もしくは友人、知人に調査を頼むことは失敗に終わる確率が高く、法令に抵触するおそれもあります。
探偵業の届出をしていない者が尾行や張り込みをすることは、ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)の第2条に定められた、規制行為の「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先その他、通常所在する場所の付近において見張りをしうろつくこと」に該当しかねないハイリスクな行為であり、通報される可能性も十分あります。
また、不倫した配偶者やその相手への制裁目的で職場や近所に不倫の暴露をするのは、刑法第230条の「名誉毀き損」や第231条「侮辱罪」に抵触し、民法第723条「名誉毀き損における原状回復」によって損害賠償請求されかねません。
まとめ
不倫は犯罪ではなく、民法の「不法行為による損害賠償」及び、裁判離婚の事由の「不貞行為」に当てはまるため損害賠償の対象となりますが、犯罪ではありません。しかし、探偵の届出をしていない者が不倫相手を調べるため尾行や張り込みをする行為や制裁目的の暴露などは刑法に抵触する、とても危険な行為といえます。
話し合いや裁判に必須の証拠確保は探偵、興信所などの専門家に依頼し、制裁は損害賠償請求で行うのが法的に安全かつ効果的な方法です。